この記事は調査報道ではなく、読み比べの練習です。以下の引用はすべて、Wispr Flow 自身が公開したページ、または Wispr Flow 社員の公開投稿から取っています。いずれも 2026-08-29 に取得して確認したものです。レビューサイトや競合のブログ、要約記事をもとに再構成した内容は一切ありません。
3つの指摘はどれも同じ方法で確かめています。ドキュメント A とドキュメント B を並べ、両方を全文引用し、そこで止める、というやり方です。ページは変わります。とくにコンプライアンスに関するページはそうです。だから、各ページをいつ読んだかも主張の一部になります。2026-08-29 より後にこれらを確認し直す場合は、文面が違っていても不思議ではありません。この記事ではなく、アーカイブと照らし合わせてください。
TL;DR
- マーケティングページと「Security and Compliance FAQ」では、認証の状況の書き方が異なります。
- FAQ には、プロダクト分析から除外されるものが書かれています。一方、Wispr Flow の社員は2026年8月10日に、ユーザーの音声入力を国別に集計した単語頻度の分析を LinkedIn で公開しました。
- 共同創業者による2026年6月1日付の投稿は、業界全体に「デフォルトで収集する」傾向があると述べています。FAQ は、トライアルアカウントと標準アカウントのデフォルトを明記しています。
1. 認証の表記
ドキュメント A:プライバシーの概要ページ wisprflow.ai/privacy(2026-08-29 に確認)には、次のように掲げられています。
SOC 2 Type II Compliance
および
ISO 27001
ドキュメント B:Security and Compliance FAQ(2026-08-29 に確認)には、次のように書かれています。
SOC 2 Type I: completed April 2026 by A-LIGN, clean unqualified opinion, Security scope. Report available under NDA.
また、ISO 27001:2022 については次のとおりです。
Stage 1: completed April 2026 by A-LIGN. Stage 2 scheduled June 2026.
Type I と Type II は別の監査です。Stage 1 と Stage 2 も別の段階です。どちらのページも公開中で、どちらも Wispr が出したものです。読者は2つのタブで開いて見比べられます。
あわせて触れておくと、2026-08-29 に確認した音声入力ベンダー10社のうち、監査法人、監査の範囲、日付をどこかで明示していたのは Wispr Flow だけでした。より具体的なのは FAQ のほうで、マーケティングページと食い違っているのもその FAQ です。
2. 分析データの表記
ドキュメント A:同じ Security and Compliance FAQ(2026-08-29 に確認)です。
Privacy controls are retention-based rather than anonymization-based: under Privacy Mode dictation content is not kept, so there is no dictation dataset to anonymize. Operational telemetry and product analytics exclude dictation content by design, and Wispr maintains no anonymized dictation dataset for internal use.
ドキュメント B:Wispr Flow の社員による 2026年8月10日の LinkedIn 投稿(2026-08-29 に確認)です。
We looked at which filler words and phrases show up most across Wispr Flow users in India vs the U.S. Not what people are saying, just the filler words.
投稿はこのあと、両国の単語ごとの比率を示しています。
この投稿は、2026-08-29 に読んだ時点で193件のリアクションと32件のコメントが付いていました。サンプルが何だったのかは書かれていません。FAQ 自身の説明では、Privacy Mode の内容は保持されないので、集計できないはずです。投稿は公開されたもので、仕事の発信でもあります。出典のない主張は読む価値がないので、ここにリンクしています。この記事では投稿者を肩書きだけで呼んでいます。焦点はドキュメントそのものであり、食い違っているのは Wispr の2つのページ同士で、特定の個人ではありません。
3. 学習のデフォルト設定
ドキュメント A:共同創業者の Tanay Kothari 氏と Sahaj Garg 氏による "Privacy is the foundation"(2026年6月1日付、2026-08-29 に確認)です。
Most AI tools train on what you say, and they do so without clearly informing you. ChatGPT uses your conversations to improve its models unless you go and change it, and even after you do, it can hold onto your chats for a while.
The pattern is the same everywhere. Collection happens automatically, the disclosure is technically there but hard to find, and it's left to you to figure out what's happening with your data. I don't think that's right. When a product handles input this sensitive, you should be in control of your data from the start and not have to dig for the private option.
この投稿には2列のグラフィックが付いています。その「Industry default」列には、次の文言があります。"Opted in by default / Data stored and used for training / Privacy settings buried in menus / Recordings reviewed by humans"
ドキュメント B:Security and Compliance FAQ(2026-08-29 に確認)です。
Privacy Mode off (standard mode): audio and transcription data may be used to evaluate, train, and improve Wispr's models. This is the default for trial and standard accounts.
Enterprise and HIPAA BAA customers run with Privacy Mode on by default. If you handle confidential or privileged information, enable Privacy Mode before dictating.
Data Controls ページ(2026-08-29 に確認)には、そのスイッチの場所が書かれています。
If you allow your data to be used to improve models, your data (i.e. audio, transcript, edits) may be used to evaluate, train, or improve AI models, by Wispr. You can control this in the Wispr Flow app: Settings > Data and Privacy.
エンタープライズアカウントのデフォルトは一方向で、トライアルアカウントと標準アカウントのデフォルトはその反対です。6月1日の投稿が語っているのは業界のことで、FAQ が語っているのはプロダクトのことです。
より広いパターン
2026-08-29 に、音声入力ベンダー9社を各社の一次ドキュメントと照らして確認しました。Wispr Flow もそこに含まれます。そのうちの Otter は、日付入りで完全なサブプロセッサー一覧を otter.ai/subprocessors で公開しています(最終更新は2026年3月31日)。Wispr Flow はトラストセンターに5社の部分的な一覧を載せ、正式な一覧は DPA の Annex 2 にあり、NDA のもとで入手できると述べています。それ以外のところでは、探しても 404 になるか、"trusted service providers" のような分類名しか見つかりませんでした。
10社のうち4社は、どの一次ドキュメントにも音声認識や LLM のベンダー名を挙げていません。Notta、Speechify、Aqua Voice、Willow Voice です。これはドキュメントが沈黙しているということです。その沈黙は沈黙のまま記録しており、ソフトウェアが何をしているかの推測にはしていません。
ドキュメント同士が食い違う構図は、1社に限った話でもありません。MacWhisper のプライバシーポリシー(2024年2月付)は "No data (audio, text or other) leaves your device" と述べていますが、サポート文書では Groq、ElevenLabs、Deepgram、DeepL、OpenAI、Anthropic がクラウド経路として挙げられています。VoiceInk の README は "100% offline processing ensures your data never leaves your device" と述べていますが、プライバシーポリシーには任意のクラウドプロバイダーが12社載っています。どちらの場合も、マーケティングの一文はデフォルトの構成を説明していて、もう一方のドキュメントは機能として可能なことを説明しています。
ベンダーごと、項目ごとの完全な比較は /dictation-app-privacy にあります。
Voice Type の場合
サブプロセッサーは3つです。App Store での配信と決済を担う Apple、サイトのホスティングと DNS を担う Cloudflare、ウェブサイトの分析を担う PostHog。この3つのどれも、話した言葉が通る経路にはありません。
LLM による書き換えはデフォルトでオフです。出荷しているソースの WhisperState.swift に llmRewriteEnabled: Bool = false と設定されています。自動書き換えもオフです。
書き換えプロバイダーはすべて名前を挙げて公開しています。リモートのものが16、OpenAI 互換のカスタムエンドポイントが1つ、マシンの外に出ないものが3つで、出荷しているソースの LLMProvider.swift:213-232 に載っています。公開する価値があるのは機能そのものであり、デフォルトだけがすべてではありません。
